5月は芍薬(シャクヤク)のシーズン。ふんわりと大きく咲く花、ほんのり香る上品な香り。まさに女王!!の貫禄です。
でも、シャクヤクの切花って結構難しいんです。
つぼみが咲かないで枯れちゃった、なんかベタベタしてるのが嫌、せっかく買ったのになかなかつぼみが開かない…などなど、トラブルが起こりやすい。
花屋としては、咲き始めるとあっという間に咲き進んでしまい、水揚げや開花調整に気を遣う花のひとつです。
お客様にはちょうどいいつぼみの状態で買ってほしいんだけど、そのタイミングが難しい。
それでも!1年に1回、この初夏のシーズンだけ楽しめるスペシャルな花です。豪華な見た目、香り、手触り、ぜひ多くの人に体感してもらいたい…!
シャクヤクの切花をつぼみまでしっかり咲かせる方法、楽しむ心がまえをお花屋さんの立場からまとめてみました。
シャクヤクの切花の楽しみ方と難しさ。
市場に出回るときは、つぼみの状態。
シャクヤクの切花が流通しているときは、「つぼみ」の状態です。
畑から収穫されたシャクヤクは
生産者さんの畑 → 市場 → 花屋 → お客さま
と、運ばれるわけですが、途中で咲いてしまったらアウト。
お客様の手元に届くときに「いい感じのつぼみ」になっていて、お客様の家で咲いていく様子を楽しめるのがベストです。
咲き始めると早い!
お客様の家でちょうど良く咲いてほしい―
生産・流通・販売に携わる人たちはそのように思い、調整し、つぼみの状態のシャクヤクを運んでいます。
ところがシャクヤクのつぼみ、ほころびはじめると咲くのが早い!!
ふわっと開きかけたと思ったら…
1~2日でこんなにぶわっと!!
最近の5月はけっこう気温が高い日も多いので、油断するとあっという間に咲いてしまうんです。
「咲き始めると早い」。
これがシャクヤクの難しさのひとつです。
切花のシャクヤク、つぼみが咲かない原因。
咲き始めたら早いのですが、咲くまでのあいだヤキモキさせるのもシャクヤク。
シャクヤクは、「買ったけど、ちゃんと咲かなかった」という問題が起こりやすい花です。
固いつぼみが開かず終わってしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。花屋としてはアタマの痛い問題。考えられる原因をあげてみましょう。
水あげがうまくいかない
そもそも切花というのは、本体から切り取られてしまっているため、根っこからエネルギーを供給できません。花びんの水と自分の力で、つぼみを開かせるわけです。それにはけっこうなエネルギーが必要。
その間しっかり水を吸って元気な状態を保たなければいけないわけですが、水あげがうまくいっていないと、つぼみを咲かせる前に本体が枯れてしまうことがあります。
切花の中にも、水あげが得意な花とそうでない花があります。シャクヤクは、そんなに得意ではない方。
正しく水あげがされていないと、つぼみが咲ききる前に力尽きてしまうこともあります。
シャクヤクの基本情報・水あげの仕方などはこちらの記事にまとめています。
▶【切花図鑑】シャクヤク|花言葉・出回り時期・花もち・飾り方
つぼみから蜜が出る
シャクヤクのつぼみからは、切花にしたあとも蜜が出ます。さわってみるとベタベタするのに気づきませんか?
この「蜜」が、花びらをひらく邪魔をしてしまうのです。
花は開きたいのに、ベタベタした蜜がそれを抑えてしまうわけですね。
そもそも、咲かないつぼみだった
これは生産地での話なので、お客さんにとっては残念なことですが、「そもそも咲かないつぼみ」が出回っていることもあります。
産地でつぼみのシャクヤクを収穫するとき、「どのくらいの咲き具合のものを収穫するか」を「切り前」といいます。
切り前が遅すぎると輸送の途中で咲ききってしまって商品にならない。逆に切り前が早すぎると、つぼみを開かせるパワーがない状態で終わってしまう。この見極めは生産者さんの腕前。
また、しっかり充実した株を作ってから切花を収穫する産地のシャクヤクは、切花のもっている「咲かせる力」が全然違います。
生産者さんも日々工夫をしていますし、「咲ききるシャクヤク」をブランドにしている産地もあります。それだけ、「シャクヤクのつぼみが咲かない」問題は、業界の人にとっても課題なのです。
でも、昔に比べて「そもそも咲かないつぼみ」はずいぶん減った印象。
産地も市場も努力しています。信頼できるお花屋さんで買えば、間違いはないはずです。
固いつぼみを買ったらやってみよう!咲かせる対処法。
葉っぱを適度に取り除く
シャクヤクは水あげが少し苦手なお花。葉っぱがたくさんついていると、そこから水分が蒸散してしまいます。
葉の処理は花屋さんでもしていますが、もし萎れてくるようだったら葉っぱが多いのかも。適度に取り除いて、花への水あげをよくしましょう。
それから、買ってきたシャクヤクは花瓶に活ける前に切り口をカットしなおしてくださいね。ボウルに水をためて、その中でカットするとなお良いです。
→ これはすべてのお花に共通の作業です。新しい切り口にすると、水を吸い込みやすくなります。
つぼみの蜜を拭き取る&洗い流す
つぼみのベタベタ、それはシャクヤクの蜜。これが花びらを開く邪魔をします。
キラキラ光っているのが見えますか?これが蜜です!!
濡らした布やキッチンペーパーで蜜を拭き取りましょう。ぬるま湯や水で洗い流してもOKです。
つぼみを優しくほぐしてみる
蜜を拭き取ったついでに、手でつぼみをほぐしてみましょう。優しくね。
あれだけの花びらがこの小さなつぼみの中に収納されているのです。押し開くのは大変なパワー。ちょっと手助けしてあげる気持ちで。
残念な思いをしないために。シャクヤクを楽しむ心構え。
「どうしたらシャクヤクのつぼみがちゃんと咲きますか?」
という問いに対しては
「咲きそうなつぼみを買ってください!」
が最適解かなあ、と思っています。
昔はシャクヤクといえば「つぼみ」しか売っちゃいけない感じだったけれど、最近はふんわり開きかけのシャクヤクを店頭に並べているお花屋さんも増えました。(これは某Aフラワーマーケットさんの功績だと思う)
どうしても、「もちの良さ」を重視して、固いつぼみを選ぶ方が多いんですよねえ。
気持ちはわかる。わかるけれども、シャクヤクには今まで述べてきたような難しさがあるのです。
しっかり色が出ている、もうすぐ開きそうなつぼみを買って、開くまでの過程を楽しんでください。
このぐらい色が出てれば、まず間違いなく咲きます。
で、咲き始めるとぶわっ!と咲いてしまうので、ゆっくりおうちで観賞できるタイミングで買ってください。
忙しい週の始め、あんまり家にいる時間がないときに飾っても、気づいたら開ききって終わってた…ということになりがち。(私もよくやる)
今週末はお出かけの予定もないし、家でのんびりしよう。
そんな週末に、シャクヤクが咲いてゆく様子を眺めてください。美しさに見とれること間違いなしですよ。
おまけ:全身でシャクヤクを楽しむ方法
これ、花屋で働いてる人はやったことあると思うんだけど、
満開になったシャクヤクに、
ばふっ
と顔をうずめてみてください。
ふわあぁぁ~。幸せ(*´Д`)***
というキモチになれます。
香りがいいのはもちろんなんですが、シャクヤクの花びらって独特の触感なんですよねえ。しっとりしてなめらかで、ひんやりしてる。
完全に満開になって、ふわっと散った散りたての花びらでもいいです。手のひら一杯に集めて、
ばふっ
とね。みんなこの気持ちよさを知らないなんて、もったいなさすぎる!!
ぜひ、最後まで旬のシャクヤクを楽しんでください。
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