ここ数年で、春の花としてすっかり定着した「ミモザ」。
ぱっと目を引く明るい黄色。ふわふわぽんぽんした可愛い花。リースにしても、そのまま飾っても、ドライになっても素敵。そりゃあ人気も出るってものです。
もともとは庭木として楽しまれていましたが、最近では切花のミモザも普通に出回るようになりました。お花屋さんでは、3月8日の「ミモザの日」に合わせて店頭に並ぶことが多いのではないでしょうか。
そんな「ミモザ」ですが、「ミモザ」って植物は存在しないって知っていますか?
ミモザの正体とは?お花屋さんで出回るミモザにはどんな種類がある?鉢植えや庭で育てられる??
まとめておさらいしておきましょう。
「ミモザ」は「アカシア」のこと。

お花屋さんに切花の「ミモザ」が並ぶとき、表示には「ミモザ」「ミモザアカシア」「ギンヨウアカシア」などと書いてあることが多いと思います。本当の名前はどれなのか。
まず、ミモザという植物はありません。私たちが思い描くあの黄色いぽんぽんの花は、アカシアの花です。
アカシアにはたくさんの種類がありますが、花の雰囲気は似ています。(桜にもいろんな種類の桜がありますよね。そんな感じです)

アカシア(Acacia)はマメ科ネムノキ亜科アカシア属の植物。主にオーストラリアやアフリカに多く分布しています。
ミモザといえばフランスやイタリアなど、なんとなくヨーロッパを連想する方も多いと思いますが、本来は南半球の植物。一年にほとんど雨の降らない乾燥地に生えているものが多いのですね。
日本で切花や園芸に使われているのはその中の数種類。私たちがお花屋さんや庭で目にする「ミモザ」の正式名称は、「○○アカシア」が正解です。(種類はいっぱいあるのです。後述。)
日本で使われている「ミモザ」という言葉は、「アカシアの仲間の花」を総称した言葉である。
じゃあなんで「ミモザ」って言うようになったの?
では「ミモザ」という呼び名はどこから来たのでしょうか。
実は、「Mimosa」の学名をもつ植物があります。それはオジギソウ(Mimosa pudica)です。

オジギソウは、マメ科ネムノキ亜科オジギソウ属の植物。花はポンポンしてて似てるけど、色はピンク色です。
黄色い花を咲かせるアカシアがヨーロッパに持ち込まれたとき、「これはオジギソウ(ミモザ)に似ているアカシアだな」ってことで「ミモザアカシア」と呼ばれるようになりました。
それがいつしか「ミモザ」と略して呼ばれるようになり、もう黄色い花のアレはミモザ!!ってことになってしまったのです。(カクテルのミモザも、ミモザサラダも、黄色いミモザのイメージから作られていますよね)
ヨーロッパの人が「ミモザアカシア」と言ったのは、正確には「フサアカシア(Acacia dealbata)」。

確かに、葉っぱの感じはオジギソウっぽいかもね。
Mimosaは本来「オジギソウ」の学名。葉っぱがオジギソウに似ていたので、ヨーロッパの人たちは、フサアカシアのことを「ミモザアカシア」と呼ぶようになった。
切花としての「ミモザ」。
では、日本で切花として出回る「ミモザ」を見てみましょう。
1.ギンヨウアカシア(Acacia baileyana)

統計を取ったことはないけれど、切花で見かける「ミモザ」の9割方はこの「ギンヨウアカシア」です。
葉っぱはシルバーっぽくて小さめ。羽根のように細かい葉が付いている羽状複葉が特徴です。
2.パールアカシア(シンジュバアカシア)(Acacia podalyriifolia)

ギンヨウアカシアより少し早い時期に出回るパールアカシア。葉っぱを見ると、明らかに違いがわかります。黄色い花も、気持ち薄いレモン色。
細かい葉っぱがパラパラ落ちないため、ドライにするには優秀なのですが、まだまだギンヨウアカシアほどは出回っていません。ギンヨウアカシアとは違った魅力があるので、ぜひたくさん作られるようになってほしい。
3.フサアカシア(Acacia dealbata)

これが本家の「ミモザアカシア」。最近はたまに切花市場で見かけるようになってきました。
葉っぱはギンヨウアカシアより、くっきり緑色。ドライにしても、葉っぱの存在感が際立ちます。
その他のアカシア

ほかにもアカシアの花が出回っていることがあります。写真はホソバアカシアの花が切り花として出回っていたもの。花の付き方が種類によって微妙に違いますね。
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ミモザが切花として多く出回るようになったのは、わりと最近のこと。
黄色いふわふわの花は風に当たるとすぐしぼんでしまうし、切花としては店頭に並べにくい。最初の頃はミモザ専用の延命剤がセットでくっついてきたほど、あんまり持ちの良くない花のイメージでした。
国産の産地も増え、今後ますます盛り上がっていくのではないでしょうか。
日本の花屋さんに出回る「ミモザ」は「ギンヨウアカシア」が多い。
庭木としての「ミモザ」。

ミモザは、庭木としても使われています。花の時期になると木全体が黄色くなるほど花をつけ、ぱあ!っと明るくなるので、「ああ、この木ミモザだったんだなあ!」とよその家の庭に発見したりします。
アカシアはかなり大きくなる木なので、庭木として使うには矮性(小型のタイプ)の品種を選ぶと良いようです。
鉢植えの「ミモザ」。
庭もないし、鉢植えで楽しみたい…!そんな要望からか、ここ数年で「鉢植えのミモザ」も見るようになりました。
ただしこちらは「ミモザ」というより「アカシア」と表記されて出回っている印象。それでも春先にポンポン咲く黄色い花は、ミモザそのものです。
よく見かける品種は、”テレサ“と”モニカ”。(画像検索はこちら)
モニカはやや細長い花。テレサはポンポンした細かい花がついています。
世界中で楽しまれる「ミモザの日」。
原産地であるオーストラリアやアフリカの一部から、世界中に広がって楽しまれているミモザ。春のはじまりを告げる可愛い黄色い花は、どの国でも大人気です。
オーストラリアでは、アカシアは「ワトル」と呼ばれ、春を告げる花として愛されています。
オーストラリアの国花は「ゴールデンワトル」=「ピクナンサアカシア(Acacia pycnantha)」。黄色い花を咲かせるアカシア類は、日本の桜のようなものなのかもしれませんね。

そんなオーストラリアでは、9月1日が「ワトルの日」。ワトル(アカシア)の花や枝を身につけ、春の到来を祝います。オーストラリアは南半球ですから、9月が春なんですね。(Wikipedeaより)
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また、イタリアでは3月8日を「ミモザの日」として、身近な女性に感謝を込めてミモザを贈る日としています。
そもそも3月8日は、国連が決めた「国際女性デー」。元の理念は「女性の政治的自由と平等のためにたたかう」記念の日なのだそうです。
日本ではあまり浸透していませんが、ヨーロッパの多くの国では、日ごろの感謝を込めて女性(恋人、同僚、母親など)に花を贈る習慣があり、特にイタリアでは「ミモザを贈る」のが定番となっています。
最近では日本でもこの「ミモザの日」にあやかって、お花屋さんがミモザの切花を売るようになってきました。本来の意味も一緒に広まると良いものです。
あなたもミモザの花束、贈ってみませんか?
北半球でも南半球でも、ミモザが咲くとみんな嬉しい。それぞれの「ミモザの日」がある。
「アカシア」と「ニセアカシア」について。
最後にとっておきの、混乱する情報をもうひとつ付け加えておきましょう。
今までご説明してきたとおり、「ミモザ」は「アカシア」の花のこと。
でも私たちがよく知っている「アカシアはちみつ」の「アカシア」はまったく別の植物です。

これが蜂蜜の蜜源になる通称「アカシア」=「ニセアカシア」です。全然花が違いますね。
アカシア蜂蜜のアカシアは黄色いお花のミモザとは関係なく、ニセアカシアの花なのです。
(ちなみに、石原裕次郎のヒット曲「赤いハンカチ」に歌われる「アカシアの花」も、レミオロメンの「アカシア」も、ユーミンの「acacia」も、ニセアカシアのことです)
黄色いお花のミモザはアカシアの花だけど、「アカシアの花」と言われているものは「ニセアカシア」という全然別の植物のことであることが多い。(まぎらわしい)
詳しくはこちらの記事にまとめました!

まとめ。
ミモザをめぐるややこしいお話にお付き合いいただき、ありがとうございました。
まとめると、
・「ミモザ」という植物はない。
・「ミモザ」は、アカシア(マメ科ネムノキ亜科アカシア属)の仲間の花の総称である。
・アカシアにはいろんな品種があり、切花や園芸用として適した品種がそれぞれ使われている。
・日本のお花屋さんで切花として売っている「ミモザ」はだいたい「ギンヨウアカシア」。たまに「パールアカシア」や「フサアカシア」もある。
・アカシアの仲間はオーストラリアやアフリカが原産地。南半球の植物。
・「ミモザ」は本来オジギソウ(マメ科ネムノキ亜科オジギソウ属)の学名だが、葉っぱが似ているフサアカシアがたまたま「ミモザアカシア」と呼ばれるようになり、アカシア=ミモザという呼び名が定着してしまった。
・ミモザは春を告げる花として世界各国で記念日やお祝いに使われる。北半球では3月、南半球では9月。ミモザが咲くとみんな嬉しい。
・はちみつの「アカシア」や、レミオロメンの「アカシア」は、ニセアカシア(Robinia pseudoacacia)という別の植物。アカシア(ミモザ)ではない。
こんなことを頭に入れつつ、早春のミモザを楽しんでみてくださいね!
参考ページ
関連動画
ミモザのリース作りを動画にしてみました♪
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