今年も母の日まであと1週間。
花屋にお勤めの方は忙しい日々を過ごしていることでしょう。お疲れさまです。
花を贈ろうと思ってるけどまだ考えてないやー、という方。今すぐ最寄りの花屋さんへ!!早く行くんだ!!
というのも、母の日というのは普段の花屋の業務量を超えた注文が殺到する日。
その中でも離れた場所に花を贈る『遠方へのギフト』がべらぼうに多いのが特徴です。
遠方に生花を送る、というのは、皆さんが思っている以上に大変なことです。
物流が発展してきた現代では宅急便でお花を送ることも多くなりましたが、それでも事故や破損は一定の割合で存在します。
箱が倒れたりつぶれたりしたらダメだし、急な温度の変化でも蒸れたり枯れたり。ましてご不在で、集配所に数日置かれるなんてことになったらもうダメです。
生花はデリケートなので、「キレイなまま到着する」って結構大変なことなのだよ。
そこで昔の人たちは、「お届け先の近くのお花屋さんが配達する」ネットワークをつくろうと考えた。それが『花キューピット』に代表されるお花屋さんネットワークです。
それはいったいどんな仕組みなのか?お店で注文してからどのような手順で実家の母に届くのか?
注文を受けてから花屋の中の人がどんな作業をしているのか、ご紹介しようと思います。
お花を注文する際は、こんなことやってるんだーと頭の片隅に留めていただければ嬉しいです。
ではまいりましょう!

*『花キューピット』以外にも全国ネットのネットワークはいくつかありますが、今回は私の経験をもとに書いていますので『花キューピット』に限定しています。
【発注店】お客様から注文を受ける
店頭での販促展開は、だいたい4月になったら始めるお店が多いのではないでしょうか。早い方は4月上旬くらいから、ご注文をくださいます。ありがたい。
1.商品を決め、伝票に記入していただく
どんな商品にするか、カタログなどを見つつ決めていただきます。花キューピットで送れる商品は3240円(税込)から。
手数料は全国一律540円(2017年現在)。これは宅急便などに比べればものすごく安いです。
決まったら、住所などを伝票に記入していただきます。代筆になりますが、メッセージもお預かりすることができますよ。
読めない地名、名前などはこの時点でちゃんと確認しましょう。伝票は読みやすい字で書いてね。
お会計をして、お客さんの仕事はここまで。
2.パソコンに入力
花キューピット会員だけが見られるシステムにログインし、書いていただいた伝票をパソコンに入力します。
ここで入力ミスがあると悲惨!住所や名前の漢字など間違いがないように。
ちなみに、このようなシステムになる前はすべてFAXでのやりとり(!)でした。私が花屋の仕事をはじめた頃(15年前くらい)、パソコンのシステムに切り替わったように記憶しています。
ところが、いまだに『FAX店(うちはFAXでしか受けません)』というのが存在します。マジか…と思いますが、日本は広いので仕方ない。
その場合でも、決済はシステム上で管理されるので、入力はしなければなりません。
3.受注店を探して電話をかける
入力が終わったら、お届けをしてくれる店を探します。システム上で検索すると、近い加盟店さんがズラリと出てきます。
こちらも昔は、分厚い電話帳のような「加盟店一覧」を使って探してました。今も併用されてるのかな…
「どの店に頼むか」は完全におまかせ。お届け先への距離、定休日などを気にする程度です。
鉢ものを多く扱っている、とかの情報はあったような。あとは規模が大きそうかどうか、オシャレっぽいかどうかなど、なんとなく店名から推察したり、しなかったり。
電話をかけるまではハラハラです。
地元で行きつけのお花屋さんがあるお客様からは、指定があることもあります。
お店を決めたら電話をかけます。
(地方の花屋さんとかだと、耳の遠いおばあちゃんとかが出たりしてハラハラする。パソコンシステムに切り替わったばかりの頃は不安な人が多かったです…笑)
4.伝票内容を一緒に確認 → 正式発注完了
注文の内容を伝えて、受注が可能かどうか確認をとります。
伝票番号とパスワードを伝えると、先方からもシステム上の伝票が見られるようになる仕組み。
母の日など注文が多い時は、口頭で簡単に内容を伝えて、OKなら伝票番号とパスワードを伝えるのみ。
断られた場合はまた別のお店を探して電話をかけます。母の日近くなってくると、断られ率が上がります。お花屋さんが少ない地域だと泣きそうになります(マジで)。
5.状況を随時パソコンで確認
受注が成立したら、あとはパソコン上でのやりとりのみ。
現在その注文がどのような状態かを表す「ステータス」を双方が更新していきます。「発注済み」とか「配達中」とか「配達完了」など。
【受注店】発注店から注文を受ける
母の日が近くなると、遠くのお花屋さんからこんな電話がたくさんかかってきます。
資材の在庫や配達の都合を確認し、大丈夫そうなら受注OK。配達が立て込むときや難しい商品の場合は断ったりもします。
1.伝票内容を一緒に確認→正式受注完了
伝票番号とパスワード聞いたら、システム上で伝票を確認。「受注完了」にステータスを変更し、伝票を印刷します。
自店の控えと、配達用の特殊な用紙に印刷。ここで『配達伝票』ができるのですね。
2.商品を制作→お届け
注文の期日に商品を制作してお届けします。母の日はこういう配達がとにかく多いので、不在だとつらいのです。お願いだからいてほしい。
3.お届け完了後、パソコン画面で完了作業
配達が完了したら、システム上で配達完了処理をします。お届けした時間と、受け取りの方の名前を入力して、完了!
この作業をうっかり忘れると、発注店がヤキモキします。確認の電話がかかってくることも。
母の日には『イベント限定の共通商品』がある
発注店と受注店の商品に対するイメージの違いをなくすために、加盟店には共通のカタログが配られています。
それをお客さんと見ながら商品を決めることで、あまりにもイメージと違うものが届くのを防ぐためですね。(なにせ発注店は、受注店の普段の商品や品ぞろえも知らないのですから)
母の日や敬老の日など特別なイベントのときには、イベント限定の商品カタログが存在します。
これが毎年変わるので、なかなか大変なんですね。
ちなみに2017年の母の日カタログにはこんな新商品が(一部)。

・専用資材の購入
この限定商品のための資材を、花キューピット本部から購入しなければなりません。
加盟店である以上、一応カタログ商品は受注できるようにしなくてはいけないので、毎年変わるカゴとかピックとかウサギのぬいぐるみとかを購入します(数は自店で決められます)。これがけっこうかさばるのだよ…
・地域ごとの講習会
本年分の母の日カタログが発表されると、支部ごとに集まって講習会があります。
各店代表者が参加し、商品に対する説明や制作の際の注意点などの講習を受けます。私も何度か参加しましたが、実際に制作する時間もあったはず。
・全国一律に同じものを届ける難しさ
以上のようなことを、全国津々浦々の加盟店花屋さんがやっています。
田舎の山奥の花屋さんも、六本木でハイセンスな自社商品を売っている花屋さんも、加盟店であれば同じです。
「だっせーな」と思いながらやっている都心の花屋さんもあれば、「こんな器、余ったら使いこなせないよ」と思いながらやっている山奥の花屋さんもあるでしょう。
さらに、使うお花は日本全国どこの市場でも手に入る花材でなくてはならないので、毎年デザインを考える人もその難しさがあるようです。
ちなみに、毎年ぶっちぎりの人気を誇る受注数ナンバーワン商品は『スイート』。

日本全国津々浦々、平均をとるとコレなんだねえ。納得。
【発注店】と【受注店】どっちが大変?
これはどっちとも言えますが…
・発注店の大変さは入力の大変さ。受注店の大変さは配達の大変さ。
パソコンシステムになってから、入力が大変になりました。小さなお店は専属の入力担当がいるわけではなく、通常の花屋業務の合間にやるわけです。
さきほど1~5で説明しましたが、母の日間近になると「入力してから電話」なんてやってられない。とりあえず電話してOKを取り付けて、仕事後にまとめて入力して電話する、という感じにならざるを得ません。
受注店の大変さはもちろん、制作と配達の大変さでしょう。これはまあ仕方ないね。
・母の日の忙しさには「地域差」が大きい
母の日の場合、都心は「発注店」になりやすく、地方は「受注店」になりやすい。
都会に出てきた人たちが故郷の母親に送るので、どうしてもそうなりますね。
分布はわかりませんが、都心に近い地方都市とか忙しそうだったなあ。あと、加盟店が少ない地域は一つのお店に集中せざるを得ないので、大変だなあと思います。
お届け日の指定について。
母の日にツライのは「お届け日指定問題」。
どうしても母の日当日に届けてほしい。気持ちはわかる。気持ちはわかるけど、パンクしちゃうんだよーー。
花キューピットでは、1週間前までにご注文の場合は「母の日当日指定」を受ける、ということになっています。今年は5月7日までだね。
でもこれは、どうしても当日に届けてほしい、という方のみ。
基本は「金曜~母の日までの3日間」という感じで受けているところが多いです。
これは、不在→再配達が多いことと、少しでも仕事量を分散させたいため。
3日間の猶予をもらえばさすがに受注店に断わられることも少ないので、発注店はお客様にできるだけ余裕をいただくようにしています。
昨今の宅急便問題にも通ずるのではないかと思いますが、『母の日当日の、時間指定』はほぼ受けられないと思った方が良いと思います。ちなみに宅急便もヤバイ量になるよ。
ちょっと大変…なのはこんな注文。
最大限対応はしますが、こんなお客さまはちょっと大変、の例。
・カタログギフトのこの商品が絶対いい!これ以外はイヤ!
→ 場合によっては資材が品切れのこともあるので、できればカゴの変更可などの第二希望を伺いたいです。
・(お店にあるカーネーションを見て)この品種のカーネーションを入れてほしい。
→ 受注店がそのカーネーションを品揃えしているとは限りません。「コレ!」という品種指定はちょっと難しいかも。
・(土曜日に来て)母の日で送りたいんだけど、明日届くよね?
→ 無 理 !もっと早く来てください!!
(最大限がんばりますが、以上に説明してきたような手順があり、1週間前までに注文してくれたお客様分の制作&配達があり、そっちが優先です。わかるよね?)
まとめ。
ご注文は、お早めに。
これに尽きますね。
私が勤めてた花屋は発注が多くて、この時期はパソコンと電話にはりついていました。専任担当がいれば楽なんだけど、制作や接客もしながらだったので、入力作業は閉店後に残業…なんてこともしょっちゅうでしたね。
「お母さんに花を贈りたい。」
花の仕事に従事する人たちはすべて、その気持ちを最大限お花にこめてお届けしたいと願っていますので、
ご注文はどうぞお早めに!!
(大事なことなので2回言ったよ)
お願いします(・ω<)