お正月といえば欠かせないのは『松』。
ラン・ハボタン・千両など華やかなお正月花材とともに、年末のお花屋さんには様々な松が並びます。
松とひとくちに言っても、いろいろな種類の松が出回っていることをご存知ですか?
松の難しいところは、出回っている名前が必ずしも植物分類の名前ではないこと。若松、根引き、カラゲ、蛇の目などなど…花屋で働いていても、きちんと説明できない人も多いのではないでしょうか。
庶民的なものから、高級なものまで。年末にだけ出回る、切花の松の種類を見てみましょう!
若松(クロマツ)

お花屋さんで一番多く見るのが「若松」。まっすぐで、脇枝が4~5本出ていて、門松として使われたりもします。
この「若松」は、出荷まで3~4年程度の若い松。10センチ間隔で密集して育てられ、真っすぐなのが特徴。
この「若松」、松の種類としては「クロマツ」。
ですが、植物名ではなく「若松」と呼ばれています。
門松、若松、カラゲ松の違い

お花屋さんに出回る松でよく見るのは、「門松」「若松」「カラゲ松」。
これは実は同じクロマツで、まっすぐ育てられたカタチもほぼ同じ。
「門松」と「若松」に明確な違いはなく、玄関飾りに使われる大きめの若松が「門松」です。等級の差で名前が違う、という感じですね。
カラゲ松も同じく、まっすぐ育てたクロマツです。門松や若松は側枝がしっかり張っているのに対し(”肩がある”といいます)、しっかり張った側枝がないのがカラゲ松。
要は若松の格下の等級なのですが、仏花やアレンジメントには使いやすいので「カラゲ松」として出回っています。
大王松

葉が長く、ふわっと広がるのは大王松。
ダイナミックな姿は人気があり、大型の装飾でも活躍します。

枝が長く大きいものから、写真のように小さめのものまで、大きさはいろいろ。
大王松は普通の松と異なり、葉っぱが3葉にわかれています。

五葉松

多くの松の葉っぱは2葉(V字型)ですが、五葉松は葉っぱが5葉。
銀色がかった緑が特徴で、盆栽や庭木としても使われます。

切り花の松としては、若松よりは高級品。産地によって葉の形が微妙に異なることから、「○○ゴヨウ」と地域名で呼ばれることも。

蛇の目松

斑入りの葉が美しい、蛇の目松。
明るい黄色が入った葉色は、洋風のアレンジにも映える人気の品種です。


分解してみると、しましまの斑入りがおもしろい。
寿松

短い葉がぎゅっと詰まった姿が特徴の、寿松。

葉色は、濃い目の深い緑。
三光松

枝先に短い葉がかたまりになって付く三光松。三又にわかれた枝ぶりがキレイ。

根引き松って何?
お店でよく見る分類に「根引き松」というのがあります。これは根っこごと引き抜いて出荷される松、という意味。

ただし、花瓶に活けるときなどは根の部分を切り落として使うので、その差がわからなくなってしまうことに。
門松や玄関飾りには、根っこ付きのまま使われます。

松の種類としては、若松と同じクロマツが多いと思います。若松のように真っすぐではなく、枝ぶりよく仕立てられています。
「三光根引き」や「乙女松根引き」や「五葉松根引き」なども出回るので、「根引き」というのは松の種類を表す名前ではなく、出荷の仕方を表したものということですね。
「根引き」と同じように出荷の形態を表す言葉で、「ナタ切り」というのもあります。
これはある程度大きな松で、木の根元をナタで切って出荷される松のこと。一般の方がお花屋さんで見かけるというよりは、装飾などに使われる大きな松であることが多いです。
松の名前の見分け方、まとめ。
ややこしい松の名前の見分け方、おわかりいただけたでしょうか。
今回紹介したのは比較的メジャーな品種。お花屋さんで目にすることが多い名前を取り上げてみましたが、これがすべてではありません。市場を見てみると、枝ぶりや品種でまだまだ知らない松があるなあ、という感じ。
とりあえず、ざっくりとまとめです。
・花屋さんで一番よく見るのは「若松」。
・「若松」はクロマツのこと。クロマツを3~4年まっすぐに育てたものを「若松」という。
・「門松」「若松」「カラゲ松」はみんなクロマツ。枝ぶりや長さで名前が違う。
・「大王松」「蛇の目松」「三光松」「五葉松」などは、種類や品種の違い。
・「根引き」は根をつけて出荷する形態のこと。若松などと同じクロマツが多いが、種類の違う松も「根引き」で出回るものもある。
お正月の前後でたくさんの種類が出回る松。植物名だけで分類されているわけじゃないので、ちょっとややこしいですね。お店で見かけたら、その違いを見比べてみてください。
<参考>「若松」を生産する現場がおもしろい
松って木の枝から切り出してると思っている方もいるかもしれませんが、切花用の松はちゃんと農場でつくられています。
とくに流通量の多い若松は、3~4年で出荷されるのでかなり密集して育てられています。
農場の様子をレポートしたサイトをリンクで貼っておきますので、興味のある方は読んでみてください!
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