マニアックな話題ですみません…
「アマリリダセアエ」と検索してこのページに来たアナタ。いらっしゃいませ!ぜひ最後まで読んでいってください。
ネリネやリコリスの切花を入荷した際、伝票やシールに書いてある「アマリリダセアエ」の文字。何だコレ?と思ったことありませんか?
結論から言います。
アマリリダセアエは花の名前ではありません。
お客さんに聞かれたとき、プライスカードに記載するとき、「このお花は、アマリリダセアエですよー」とか言わないで!
どういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
「アマリリダセアエ」は、市場で使う「品目」のひとつです。
まずは言葉の意味から。アマリリダセアエ(Amaryllidaceae)は「ヒガンバナ科」という意味です。
生物の分類には明確な決まりがあり、植物の科名は「~aceae」と表記されることになっているんですね。
バラ科はRosaceae、キク科はAsteraceae、みたいな感じ。
Amaryllidaceae の言葉の意味的は「ヒガンバナ科」の植物全般のことです。
ところが、花の市場で使われる「アマリリダセアエ」は、入荷する大量の切花を仕分けるための「品目名」のひとつです。
*市場によって品目名は違います。「アマリリダセアエ」がすべての市場で使われているわけではありません

市場の伝票はこんな感じ。バラやキクは「品目名ー品種名」の順で書かれますが、細かい品目では省略されがち。ちなみにオーレアは、リコリスの中の品種名。
大田市場で使われている品目はこちらで見られます。
毎日大量の切花がやりとりされる市場ですから、このコード番号をつけて管理されるんですね。
「バラ」や「カーネーション」などの大品目は、植物名がそのまま品目名に。流通量が少ないものは「ネイティブフラワー」や「ソノタノクサバナ」「ハモノ」「ヤナギルイ」など、まとめた総称が品目名になっています。
「アマリリダセアエ」も植物名ではなく、同類をまとめた総称が品目名になっているタイプです。
「アマリリダセアエ」に分類されるのは、こんな花。
「アマリリダセアエ」は市場で仕分けをするための品目名。では、どんな花がここに分類されるのでしょうか?
まずは、ネリネ(ダイヤモンドリリーも含む)。

そして、リコリス。

そして、ユーチャリス。
ユーチャリスは店頭ではあまりなじみがありませんが、ブライダルではブーケ素材として使われます。

それ以外にも、ハエマンサスなんて珍しいのも入っていますね。
ネリネもいろんな品種があります。
アマリリダセアエに分類されるのは、おおむね「ネリネやリコリスなどのヒガンバナ系と、ユーチャリス」と思っておいてよさそうです。
ちなみに、ネリネとダイヤモンドリリーとリコリスの違いについてはこちら。

アマリリスはアマリリダセアエ?
その響きから「あれ、アマリリスは?」と思った方。なかなか鋭いです!
アマリリスといえばクリスマスやお正月によく使われますね。大きな花がとっても豪華。
球根で育てている方もいらっしゃるのではないでしょうか。球根をセットした鉢物もよく出回っている、園芸の人にも切花の人にも馴染みのあるお花です。

豪華なアマリリスは冬のお楽しみ。
アマリリスもれっきとしたヒガンバナ科の植物です。ですが、大田市場の分類表を見ると「アマリリスルイ」という品目名が付けられていますね。
アマリリスはもともと流通量が多く、単体で品目を割り振られていたのでしょう。
というわけで、
アマリリスはヒガンバナ科の植物(Amaryllidaceae)ですが、市場の品目では「アマリリダセアエ」には入っていません。
なんじゃそりゃー。
アマリリスもいろんな品種があって、とてもキレイ。
品目は流通量やトレンドによって変わる。
市場に流通する切花の量は膨大です。野菜は約200種、果物は100種に対し、切花は1100種とも!!
新たに外国から輸入されるようになった花や、技術の進歩により切花として生産・流通するようになった花など、新しい種類の花がどんどん加わっていきます。
「品種」じゃなくて、「品目」レベルでですよ。そりゃあ市場の人も大変だろうと思います。
たとえば最近も新しく「ディスバッドマム」という品目ができました。従来の菊におさまらない、洋風で大きな菊(マム)が増えてきたためです。
また、かつて「トルコキキョウ」だった品目名が「リシアンサス」に変わったり。ネリネやリコリスも昔は「ソノタキュウコン」なんかに入っていたような気がするなあ。

大輪で華やかな洋菊は、従来の菊とイメージも違いますね。
このように、品目は流通量やトレンドによって変わっていくもの。あくまで市場で使いやすい分類なので、新しく出てきた花の情報や知識はお花屋さんそれぞれがしっかり勉強しないといけないのです。
市場の品目について、思うこと。
市場の品目は、生物学的にはビミョウだったり、いつの間にか変わったりするもの。
市場に集まる花の量、新たに増えていく品目や品種の膨大さを見ていると、ある程度仕方のないことだと思います。
切花は特に園芸知識が必要でないので、いいかげんな名前のまま出回っても気付きにくいんですよね。
(アマリリダセアエで検索してみると、「今日入荷したアマリリダセアエです~」なんて書いてる花屋のブログがいくつもあります。どうなのそれ)
一番大事なのは、お客様に間違った知識を伝えないことです。
体感ですが、生産者、市場の人、花屋の人、一般のお客様の4者では、お客様が一番「花のことを知りたい人」なんです。
品種名を品目名のように伝えたり、略称をプライスカードに書いたり、ついついやりがちですが、花屋は正しい知識を伝えるように気をつけなければなりません。
正しい名前を使ったり、そのお花にまつわる知識を地道に正しく伝えていくことが「お花が好きな人=未来のお客さま」を増やすことにつながるはず。
そのためには、産地、市場、仕入れをする人がきちんと情報を出すこと。店頭に立つ末端の人にまで情報を共有することがとても大事なんです。いろんな方向に言いたい。
…という気持ちで、こんなマニアックなことを書いてみました(笑)
ダイヤモンドリリー人気は年々伸びているので、「アマリリダセアエ」もそのうちなくなって「ネリネルイ」とかになるんじゃないかなーと予想。さてどうなることでしょうか。