お花屋さんでバラやカーネーションを買うとき、「スプレー」「SP」という表示を見たことありませんか?
エスピー?なんじゃそれ、と思う方もいるでしょう。花屋で働いている人にとっては当たり前の用語でも、お客さんにはきちんと伝わっていなかったりするもの。(だからプライスカードにはSPと書かないようにと言っているのに…!)
また、花屋で働いている人でも、スプレー咲きの作られ方は意外と知らない人もいるかもしれません。ここで改めて、スプレー咲きとスタンダード咲きのおさらいをしておきましょう。
「スプレー咲き」=「枝分かれ」して咲く咲き方のこと。
まずは語源から。
「スプレー」は「spray」。英和辞典をひくと、
2.しぶき状のもの(名詞)
3.しぶきをとばす(他動詞)
4.霧を吹く(自動詞)
5.しぶきとなって飛び散る(自動詞)
また、
2.小枝飾り(模様)
3.(枝・花などの)束
などとあります。
園芸で使う「スプレー」はこの2番目の意味。「先が分かれている小枝」が由来ですね。
花屋で使う用語「スプレー咲き」は、「1本の茎に数輪お花がついているもの・枝分かれして咲いているもの」という意味です。
枝分かれは「スプレー咲き」、1本で咲くのは「スタンダード咲き」。
具体的に見てみましょう。例えばバラ。
普通みなさんがバラと言って思い浮かべるのは、1本の茎に1輪の花が咲いているこんなもの。
それに対して、スプレーバラはこちら。1本の茎に数輪の花が枝分かれしてついていますね。
枝分かれしたものを「スプレー咲き」と呼ぶのに対して、1輪だけ咲くものを「スタンダード咲き」と言ったりします。
一般に、スタンダード咲きよりスプレー咲きの方が1輪の花の大きさは小さいです(例外もありますが)。
ただ、スプレー咲きは1本でボリュームを出しやすいので、花束やアレンジをつくるときは重宝しますね。
「スプレー咲き」という言葉が使われる花は?
じゃあ枝分かれしてる花はみんな「スプレー咲き」と言うのか?といえば、そんなことはありません。
トルコキキョウやナデシコは1本の茎に数輪の花がついているのが普通ですが、「スプレー咲きのトルコキキョウ」とは言いません。
花屋において「スプレー咲き」という用語が使われる花は、主に バラ、カーネーション、菊(マム)の3つ です。
この3種は、スタンダード咲きとスプレー咲きがどちらも多く出回っているので、区別するために「スプレー」という用語を使います。
スタンダード咲き(茎にひとつしか花がない)トルコキキョウやナデシコはほぼないので、トルコキキョウやナデシコにはあえて「スプレー」とつける理由もないですからね。
「スプレー咲き」の作られ方は?スプレー咲きの品種があるわけじゃない。
では、スプレー咲きとスタンダード咲きは、植物的には違う品種なのでしょうか。
じつは、スプレー咲き・スタンダード咲きは「人間がどう仕立てるか」の問題。品種とは本来関係ありません。
例えば、ひとつの茎にできた多数のつぼみを摘み取ってひとつにして大きく咲かせる→「スタンダード咲き」。
例えば、摘心をして枝分かれを多くする→「スプレー咲き」。
(植物の多くは「頂芽優勢」という性質を持っています。茎の先端にある芽が、側芽より優先的に育つ性質です。そのため、先端の芽を摘んでやることで側芽の生長を促し、それぞれの側芽に花を咲かせることができます。むかし理科で習いましたね?)
植物によってやり方は異なりますが、「どんなふうに花を咲かせたいか」を人間が考え、ハサミを入れて、希望の形に仕立てている わけです。
その結果、スプレー咲きやスタンダード咲きができるのですね。
まとめ。
スプレー咲きとスタンダード咲きについて、まとめです。
2.お花屋さんや市場では「SP」と略して書かれることもある。
3.スプレー咲きに対して、1本に1輪の花が咲くのは「スタンダード咲き」。
4.スプレー咲き・スタンダード咲きは、仕立て方によってつくられる。
「20本のバラの花束」みたいに数を気にするときは「スタンダード咲き」。ボリュームを出したいときや、短く切り分けて使いたいときは「スプレー咲き」が便利です。
お花屋さんで「スプレー」の文字を見かけたら、ぜひ思い出してくださいね。
追記:マムの生産者さんから参考写真をいただきました!
Twitterでこの記事をつぶやいたところ、マムの生産をしている方から参考写真をいただきました。ありがとうございます!
花屋としては、スプレーマムでおなじみの「ロリポップ」シリーズ。
ロリポップピンク、ロリポップパープル、ロリポップレッドなどがあります
最初はこんな感じでつぼみがついていて、このままだとスプレー咲きに。
こちらでは、つぼみを摘みとって、スタンダード仕立てにして出荷しているそう。
こんなふうに、同じ品種でも、仕立て方でスプレー咲きになったりスタンダード咲きになったりするんですねえ。
貴重な写真をありがとうございました!