特別な日のギフトではなく、日常的に花を買ってもらうにはどうしたらいいのか。
言わずもがな、お花業界の重要課題ですね。
モノ日(イベント)に頼った売り方は、販売も流通も疲弊する。日常的にホームユースの花を買ってもらうことは業界の安定のためにも必要なことです。
ヨーロッパなどではホームユースの花が生活の中に定着しており、地域の花屋の役割も大きい。それは文化の差だけなのでしょうか?
最近、私自身が少し生活を変えたことで気付いたことが色々あり、なにかのヒントになればとまとめてみました。
そもそもちゃんと「生活」できているのか
「花のある生活」。素敵な響きですね。
花やグリーンのある生活という言葉から想像するのは、
という感じでしょうか。うっとり…
でも私は思うのです。
みんなそんなに「家」にいないじゃん?
と。
都市における普通の勤め人は、月曜から金曜までオフィスに出勤して仕事をしています。比較的ゆとりのある人でも、朝8時頃には家を出て、帰ってくるのは19時頃。
もちろん残業があったり、趣味の活動があったり、もっと通勤が長かったり、平日は帰って寝るだけという人も多いはず。
ダイニングテーブルに飾った花を見る時間は、一日2~3時間あればいい方かも?
昔は結婚した女性が専業主婦になり、家にいる、というのもあったでしょう。または引退したおじいちゃんやおばあちゃんが家にいて、仏壇用の花を買う、とかね。
ところが今は単身世帯、共働き世帯が増えていて、平日の昼間は誰も家にいない、という家は多いと思うのです。
(私も一人暮らしでばりばり働いていたとき、家には寝に帰るだけでした)
さらに人のいない家というのは鍵をかけ窓も閉めているので、夏は家に帰ると空気がむわっと暑く淀んでいるもの。
切花にとっても、観葉植物などの鉢物にとっても、決して良い環境ではないのです。
日常的に花を飾れないのは、家に長く滞在するライフスタイルを送れる人が少ないから。
という仮説がうかびました。
日持ちではなく、鑑賞する時間を考える
切花の品質への満足度も、観賞時間に関わるのではないでしょうか。
先日シャクヤクの切花を飾ったのですが、みるみる花がひらき、ほぼ2日ほどで満開になり、数日ではらはらと散っていきました。
でも私は全然満足だった。3日間その様子をそばで眺めて過ごしたからです。
これが昼間働くOLさんだったらどうでしょう?
夜帰ってきたらもうこんなにひらいちゃってる…翌日帰ってきたらもう散ってた…せっかく買ったのに、3日しかもたなかった!と思ってしまうのではないかしら。
大事なのは花がもつ期間より、人間が鑑賞してあげる時間をのばすことでは?
と思う出来事でした。
ではどうするのか?
花を楽しむ生活を広げたいなら、みんなが家でたくさん時間を過ごすライフスタイルを送れるようにすることです。
…ってまあそんなの花屋の力だけでは無理ですね。労働の問題は根深い。
対抗策を考えてみましょう。
気長に時代が変わるのを待つ
少しずつですが、在宅勤務やフレックス、フリーランスのような働き方がしやすくなってきているのではないでしょうか。
家で仕事する人がふえれば、家に花を飾る人もふえるかも。長い目で。
「家」じゃない場所に飾ることを提案する
花を鑑賞する時間(ともに過ごす時間)が長い場所に飾ってもらいましょう。
オフィスに。駅に。カフェに。定食屋に。
個人で買うというよりは、公共の場に花があるイメージ。
個人で買う場合も、オフィスワークの方は自分のデスクに飾ったり、お店で働いている方はお店に飾るとか。
装飾やおもてなしのためではなく、自分のために、スタッフのために飾るという発想を提案する。
家にいる予定のときだけ買う
家には寝に帰るだけなら、花は飾らなくてもいいです。だって誰も見ないんだから。
そのかわり、予定のない週末とか、ちょっとゆっくりするつもりの日の前日には花を買う。そういう文化をつくる。
それは金曜日かもしれないし、人によってさまざまでしょう。
明日は家でのんびりしようという日には花屋に寄ってね、という啓蒙活動。
―――――
通勤して仕事をしている人にとって、「生活」をちゃんとできない、というのは切実。料理とか、掃除とか、洗濯とかもそうです。
毎日限られた朝と夜の時間でいかにこなすか、という状態で、とても花を楽しむ余裕がない。
そして悲しいことに、花を売っている人たちも大半は、花を自宅に飾って楽しむ余裕のある生活はとてもできていません。終電まで働いて帰って寝るだけ…なんてよくあるし。
日常の花が定着しないのは、日常を楽しむ余裕のある人が少ないから。
そしてそれは、花屋もね。
ちょっと偏った仮説でしょうか?
私は、家に長くいるようになって、花を飾るのいいなあと思うようになりましたよ。
単純に、長く一緒に過ごせば愛着もわくし観察もするし手入れもするので花も長持ちするし、満足感を得られやすい。
一緒に過ごせる時間をのばすにはどうしたらいいか?という角度から考えてみるのは意味があるのではないでしょうか。