お花屋さんで夏に活躍するグリーンのひとつ、「ナルコラン」。アレンジにも花束にも使いやすく、斑入りの葉は涼しげで夏にぴったりです。
ところでこれ、「ナルコラン」と言われたり「ナルコユリ」と言われたり、本当はどっち?と不思議に思っていました。(市場やお店では「ナルコ」と略すことが多いのでどっちでも影響はないのですが…)
このたび高知の牧野植物園で実物を見てきたので、整理してみたいと思います!
「ナルコ」はこんなグリーン
お花屋さんで「ナルコ」といえばこれ。
切り分ければ小さいアレンジにも使えるし、茎が硬くて傷みにくく、夏に重宝するグリーンです。
市場でも、「ナルコラン」と書かれたり「ナルコユリ」と書かれたりしています。はたして正解はどっちなのでしょう?
「ナルコユリ」も「ナルコラン」も存在する
植物としては、「ナルコユリ」も「ナルコラン」も存在します。詳しく見てみましょう。
ナルコユリとは
学名:Polygonatum falcatum
キジカクシ科アマドコロ属
和名:鳴子百合
日本では本州~九州に自生しています。葉がやや細いのが特徴。
ナルコランとは
学名:Polygonatum odoratum var. pluriflorum
キジカクシ科アマドコロ属
和名:甘野老(アマドコロ)・鳴子蘭
こちらは主に「アマドコロ」と呼ばれる植物。アマドコロの別名がナルコラン、という感じです。
こちらも北海道~九州に自生しています。ナルコユリに比べると葉が幅広ですね。
※科名について、記事の最後に補足があります
花束やアレンジによく使う「ナルコ」はどっち?
正解は「ナルコラン(アマドコロ)」
観賞用に育てられているのは主に、斑入りのアマドコロ。つまりナルコランが正解です。
ただ、ナルコユリが本当に切り葉として流通していないのか?ナルコユリに斑入りの品種はないのか?についてはわかりませんでした。
もしかしたら本物のナルコユリが、ナルコユリとして出回っていることがあるのかもしれません(ややこしい)が、一般的に花束やアレンジに使う私たちが見慣れた「ナルコ」は、斑入りのアマドコロ(ナルコラン)で間違いなさそうです。
茎を触ってみよう
ナルコユリとアマドコロ(ナルコラン)の違いは、茎をさわってみるとわかりやすいです。
アマドコロ(ナルコラン)の茎は四角っぽく角ばっています。確かに、さわってみると角ばっていますね。
対してナルコユリの茎は丸く、角がありません。
これは牧野植物園でアマドコロの茎をさわってみているところ。
花が咲くともっと違いがわかりやすいのですが、グリーンとして出回るナルコに花がついていることは少ないですからね。
結論:よく見る「ナルコ」は、斑入りの「アマドコロ(ナルコラン)」
ナルコユリとナルコランのややこしい話にお付き合いいただきありがとうございました。
私たちがよく使うグリーンである「ナルコ」の正式名称は、斑入りの「アマドコロ」で、アマドコロの別名は「ナルコラン」なので、
ナルコ=ナルコラン が正解!
という結論にいたりました。
とはいえ、切花の世界では「ナルコユリ」と呼ばれることも多いので、「ナルコ」と言っておけば問題ない…状況は続きそうです。
まあ、ナルコユリという別の植物もあるんだよ、ということで、知識の片隅に。お役に立てれば幸いです。
分類について(科のちがい)
ナルコユリ、ナルコランについて本文中には「キジカクシ科」と表記しましたが、牧野植物園の写真では「ユリ科」となっていて、「あれ?」と思った方もいるかもしれません。
植物の科目を分類する方法を「分類体系」といいますが、これにはいくつか方法があり、主流に使われる分類体系も変化しています。
むかしは植物のかたちから分類していたものが、遺伝子解析などが行えるようになったことで、より詳しくグループ分けができるようになったためです。
ナルコユリ、ナルコランについては、図鑑などによってはナギイカダ科、リュウゼツラン科、ユリ科などに分類されていることがありますが、これは採用している分類体系の違いです。
牧野植物園にもこのような看板がありましたが、今後はDNA解析をもとにしたAPG分類体系に統一されていくようです。
お花屋さんの仕事で科名がそこまで重要なことはありませんが、図鑑などで調べたときに科名が違っていることがあれば「分類体系が変わったからかな」と理解しておくとよいと思います。
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