お花屋さんの業界誌と言えば、誠文堂新光社の『フローリスト』。
現在、隔月刊で発行されていますが、バラエティに富む充実した内容になっています。
今回は、「アイロニーのメソッド」という特集。世界ブランドをめざす花屋アイロニーの秘密に迫っています。今回、ビジネスモデルまでかなり踏み込んで特集されており、花の仕事をする人は一読の価値ありです。
さっそく見ていきましょう!
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特集:世界ブランドをめざす花屋 アイロニーのメソッド
「世界一好きな花屋と言ってもらえるように。」をモットーに、独自のメソッドによる表現で多くのファンを魅了しているアイロニー。
コンセプトやマネタイズ方法・世界ブランドへの道筋などを、代表の谷口さんに語ってもらった、30ページにわたる大特集です。
アイロニーのショップ展開
芦屋本店、南青山店、パリ店、と3つの店を持つアイロニー。
芦屋本店はアイロニーの1号店、同店らしさを極めるお店。南青山店はスクールの拠点。パリ店はヨーロッパの発信地です。それぞれのお店が店頭の写真とともに紹介されています。
麗しのフラワーギフト
アイロニーがめざすのは“大衆的でありながら高度なデザイン”。自ら美しいと感じることに妥協はしないというブーケとアレンジの紹介です。
谷口敦史インタビュー:アイロニーのメソッドとビジネス戦略
アイロニーのコンセプトは“自然”と“色気”だという谷口さん。
面白いなと思ったのは、アイロニーは「色では冒険しない」と決めている話。ピンクや紫系をよく使うとのことですが、確かにオレンジや黄色、鮮やかな青…みたいなアレンジはアイロニーでは見ない気がします。
花屋はどうしても、お客様の要望に応えようとなんでもやらなきゃと思いがちですが、あくまで花屋側でスタンスを決め、やらないことをしっかり線引きしているのはすごい。
また、スタッフ育成カリキュラムや独自のビジネスモデルも紹介されます。
写真集の出版やオンラインサロンなど、花屋さんではあまり見かけないマネタイズに取り組んでいるのはとても参考になりますね。
世界的に有名なフラワーデザイナー、クリスチャン・トルチュとの交流も語られています。アイロニーは根っからフランススタイルなんだな~と納得。パリに店を出しても、特に和風のことはやらない。というのもやはり「やらないことをはっきり決めている」姿勢がうかがえます。
誌上ブーケレッスン
大切なのは基本となる考え方と作る人が美しいと感じるように束ねること。ブーケロンとシャンペトルブーケの作り方が写真で順を追って紹介されます。
写真作品「パリであなたの花束を」
独学で撮影を学び、花の写真を撮りためてきた谷口さん。パリの街角や郊外で撮影した花束の写真は、風景の中にあって美しい。
注文主のイメージに合わせた花束を束ね、街角で撮影し、額装して販売する。写真をまとめて写真集を作り販売する。というように、きちんとマネタイズにつなげているところもすごいです。
認定校講師による座談会:アイロニーを支えるファンコミュニティ
「アイロニーフラワースクール認定校」という制度がありますが、その講師の方々が集結してアイロニーの魅力を語ります。
じつはハナラボもアイロニーのメルマガをたびたび読んでいるのですが、フランスでの仕事へのボランティア募集や、谷口さんを囲む食事会の募集など、ファン向けのイベントをよくやっているな~と思っていました。
座談会の記事を読み、「なるほど、こういう方々が参加されているのね!」と腑に落ちました。よいコミュニティを育てていく手腕も、アイロニーの独自性だと思います。
ジョルジュ・フランソワの花と仕事
3度目の来日をしたムッシュー(フランソワ氏を周囲の人がそう呼んでいるそう)へのインタビュー記事。
ブーケロンと呼ばれるラウンドブーケの生みの親であるムッシュー。ブーケロン誕生の背景や、花とともに生きる人生が語られます。今年81歳を迎えるムッシューは、まだまだやる気満々です。ムッシューらしいブーケも美しい写真で紹介。
パリの個性豊かなお花屋さん
パリの花店を「実力派」と「ニュー・ウェイブ」に分けて紹介。こちらも23ページにわたる、気合いの入った特集です。8店舗のショップ、都市型農業で取り組む花の生産が紹介されています。それぞれの花店の個性やオーナーの人となり、こだわりが伝わります。
また、日本とパリの花事情の違いや花業界の最新のトレンドまで、インタビューを通して探ります。
連載記事
バラの解体図譜
世田谷花きバラ担当による連載。今回は「ホワイトバンビーナ」。
花色はオフホワイトで季節によってはピンクっぽいことも。花弁には光沢があり、深いカップ咲き。日持ちがとてもいいバラです。葉は濃いグリーンでトゲはほとんどありません。
花束の解剖学
梶谷奈允子さんの、花束を解剖してどのようなバランスが秘められているかを探る記事。今回は花が丸型と星形の花束で、「形」のバランスを検証します。
季節の枝物
8月の枝物:キソケイ
キソケイの枝と葉を整理してラインを作り、高さを活かしてパラレルで制作したデザイン。
9月の枝物:イガナス
個性的なフォルムのイガナスとピンクッションを合わせたデザイン。動きのあるアレンジになっています。
ボタニカル・メタモルフォーシス
今回は、「グロリオサの花形を活かした造形」。グロリオサのつぼみから開花するまでの様子をアレンジに取り込みました。
一緒に合わせたシマハランも、グロリオサを活かした形に制作しています。
旬花探訪
今回は、長野県箕輪町のリンドウ。リンドウはもとは日本に自生する山野草ですが、日本のリンドウ育種の先頭を走るのは長野県の有限会社スカイブルー・セトの瀬戸啓一郎さん。
創業者である父から経営を引き継ぎ、リンドウの育種、苗生産、切り花生産の各部門を率いています。お盆やお彼岸だけでなく、ブライダルやギフトに使ってもらえる花色や花型があるのではないかと、フラワーデザイナーが使いたくなるような品種を提案。
リンドウは国産の9割以上が露地栽培ですが、開花時期がずれるよう品種を変えることで対応しているそう。育種家の苦労が伝わってきます。
まとめ。
アイロニーの特集は多方面からのアプローチで読みごたえがありましたね。お花屋さんとして美しさを追求する姿勢が多くの人を魅了するのでしょう。
パリのお花屋さん特集、ムッシューのインタビューなど、今月号は読みごたえたっぷり。最近の中では間違いなく保存版でしょう。今後もぜひ、こういった特集を期待したいです。
次号の特集は「記念日を花で彩るアニバーサリーフォト」「花で押し活!」です。ハナラボの知り合いのお花屋さんも登場予定とか?
花の世界もどんどん広がってきています。楽しみにしましょう。
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