オリンピックの表彰式でメダリストたちに渡されるビクトリーブーケ(メダリストブーケ)。
今やすっかり国際大会では定番になり、オリンピック以外の大会でも目にすることが多いブーケですが、いつから使われているか?というと、1984年のロサンゼルスオリンピック(夏季五輪)からと言われています。
以前の記事で夏のオリンピックのビクトリーブーケまとめを作ったので、今回は冬のオリンピックをまとめてみました。
>>関連記事 【ビクトリーブーケの歴史】歴代オリンピックのビクトリーブーケ総まとめ!【夏季五輪編】
ヨーロッパや北米が中心となる冬季スポーツは、ブーケのレベルも高くて見るのが楽しいです。
それではいってみましょう!
1988年カルガリー五輪のビクトリーブーケ
1988年の冬季五輪は、カナダのカルガリーで行われました。
スピードスケートの黒岩彰選手が銅メダルを獲得。フィギュアスケートでは、まだ高校生だった伊藤みどり選手が5位に入賞した大会です。
ビクトリーブーケは赤いバラと白いカラー。丈の長いクラッチブーケです。
1992年アルベールビル五輪のビクトリーブーケ
1992年の冬季五輪は、フランスのアルベールビルで開催されました。夏季オリンピックと同じ年に行われた冬季大会はこの年が最後。
ノルディック複合団体で、三ケ田礼一・河野孝典・荻原健司選手のチームが金メダルを獲得し、大きな話題になりました。
フィギュアスケートの伊藤みどり選手が銀メダル、スピードスケートでは黒岩敏幸選手が銀メダル、橋本聖子・宮部行範・井上純一選手らが銅メダルを獲得しました。
ビクトリーブーケは赤いガーベラと白いスプレーマムのラウンドブーケ。写真を見ると、ボリューム感に驚かされますね。
光沢のある黒いラッピングペーパーも印象的。最近のブーケは小ぶりでラッピングもないので、そういえば昔のビクトリーブーケはラッピングがあったんだなあ!と新鮮です。
1994年リレハンメル五輪のビクトリーブーケ
1994年の冬季五輪はノルウェーのリレハンメルで開催されました。開催年調整のため、前回のアルベールビルから2年後の開催となっています。
ノルディック複合は黄金期!阿部雅司・河野孝典・荻原健司選手チームが金メダル。またスキージャンプ団体ではあわや金メダル…!のところ銀メダルに終わり、原田雅彦選手の「コケちゃいました」が話題になりましたね。
さて、ビクトリーブーケを見てみると、室内競技と屋外競技で花材もデザインも違うようです。
室内会場では、黄色と白のチューリップを束ねたブーケ。大会のモチーフが入った長いリボンが垂れていて、シンプルで素敵です。ラッピングはありませんね。
屋外競技の選手が持っているブーケは、大きな松かさやモミを使った北欧らしいデザインです。リース型の丸いブーケホルダーにリボンが巻かれているように見えます。
これ以降の大会でも、屋内会場と屋外会場でブーケデザインが違うことがあります。冬季大会ならではの気候の厳しさのためでしょうか。確かに、全部同じにしなくてはならないと決まっているわけではないし、色々なデザインが見られるのも面白いかも。
1998年長野五輪のビクトリーブーケ
1998年の冬季五輪は長野で開催されました。1972年の札幌以来、2度目の日本での開催です。
日本人選手も大活躍。スピードスケートの清水宏保選手、ショートトラックの西谷岳文選手、モーグルの里谷多英選手、スキージャンプの船木和喜選手、前回のリベンジをはたした原田雅彦選手率いるスキージャンプ団体チームが金メダルを獲得。冬季オリンピック史上初の合計10個のメダル獲得となりました。
ビクトリーブーケはアルストロメリアとスプレーマム。アルストロメリアの長野県での生産は全国一で、非常に長野らしい、印象的なブーケでした。
ブーケデザインはフラワーデザイナーの村松文彦氏。上の写真を見ればわかるとおり、リース状のブーケホルダーを使って、真上から見ると花がリース状にデザインされたブーケでした。手が込んでいる…!
屋外会場の写真を見ると、ぎゅっと束ねたラウンドブーケ(花材は同じ)もあったように見えたので、何パターンかあったのかも。
長野県内の花屋さんが協力し、800束のブーケを制作したそうです。
2002年ソルトレークシティー五輪のビクトリーブーケ
2002年の冬季オリンピックはアメリカのソルトレークシティで開催。
スピードスケートの清水宏保選手が銀メダル、モーグルの里谷多英選手が銅メダルを獲得しました。
ブーケはヒマワリとデルフィニウム?黄色いリボンが印象的です。
もう1種類のブーケは黄色いバラのようです。上の方できゅっと束ねてハンドル部分を長くしたブーケですね。
屋内・屋外ではなく、男女で別のデザインだったのかな…?
2006年トリノ五輪のビクトリーブーケ
2006年の冬季オリンピックは、イタリア・トリノで開催。
フィギュアスケートの荒川静香選手が金メダルを獲得。イナバウアーが話題になりましたね。
トリノのビクトリーブーケはなんと、椿の花!日本でもあまり椿のブーケなんて見ませんよね。
イタリア人は椿(イタリア語ではカメリア)が好きなのでしょうか、椿祭りというのもあるそうです。オペラの椿姫もあるし。
ブーケや装飾に使われた椿は、椿の栽培で有名なヴェルバーニアという地域から、オリンピックのために用意されたのだそう。
ハンドルは真っ赤なリボンで巻き上げられ、情熱的なブーケです。
すごく作りやすい(揃えやすい)花材ではないだろうに、あえて椿が選ばれたというのは、こだわりを感じますね。
2010年バンクーバー五輪のビクトリーブーケ

2010年の冬季オリンピックは、カナダのバンクーバーで開催されました。
フィギュアスケートの浅田真央選手、スピードスケートの長島圭一郎選手、パシュートチームが銀メダルを獲得。フィギュアスケートの高橋大輔選手、スピードスケートの加藤条治選手が銅メダルを獲得しました。
バンクーバーのビクトリーブーケは、グリーンの菊とヒペリカムの実。ブーケの報道が多かったことも印象に残っています。
アレンジを担当するのは、生花店「Just Beginnings Flowers」(13686-94a Ave., Surrey)を営むJune Strandbergさんと「Margitta’s Flowers」(#155-123 Carrie Cates Court, North Vancouver)のMargitta Schulzさん。
ブーケ製作には、Juneさんが運営するフラワーデザインの専門学校「Phoenix Centre」で学んだ20人のバンクーバーの女性たちが協力する。同校は、麻薬中毒や家庭内暴力で悩む女性、犯罪歴を持つ女性やセックストレードで生計を立てている女性、シングルマザーの女性など、さまざまな困難を抱える女性たちを積極的に受け入れ、フラワーアレンジを通して新しい自分や未来の目標を見つけるきっかけを提供している。
デザイン担当がどんな方なのか、どんなストーリーでつくられるのか、あまり報道されることの少ないブーケですが、こうやって背景が語られるのはとても良いことだなあと思います。
涼しげなグリーンのブーケとブルーのリボンが素敵。葉物の使い方もオシャレでした。
2014年ソチ五輪のビクトリーブーケ
2014年の冬季オリンピックは、ロシアのソチで開催されました。
印象的なのはなんといってもフィギュアスケート羽生結弦選手の金メダル。また、スキージャンプではレジェンド・葛西紀明選手が悲願の銀メダル。
その他にも、スノーボードの平野歩夢選手、ノルディック複合の渡部暁斗選手、スノーボードの竹内智香選手が銀メダルを獲得しました。
ブーケは白と緑のスプレーマム、紫のスターチス、黄色のソリダゴにブルーのリボン。

それぞれの花材に意味があり、
『ブーケの色はリゾートシティであるソチを象徴している。
ソリダゴの黄色はクラスノダール地方の富の象徴。
緑と白のマムは黒海に沿ってひろがる谷と野原と山のコントラストをあらわす。
月桂樹はオリンピック勝者のシンボルで、コーカサスの人々のあたたかさともてなしの心。
ユーカリはかつて湿地帯だったソチに植え、土地を改良した歴史のある植物である』
『スターチスの紫はソチの黒海を象徴する色』
『白のマムは山のエリアの雪山を、緑のマムはコースタルエリアの草原を、それぞれ象徴している』
『それぞれ競技の行われる山岳地帯と沿岸地帯では気温も湿度も異なるため、どんな気候でも耐えうるブーケでなくてはならない』
とされています。(*当時ロシア語や英語のサイトを読んでメモした内容です。参考リンクがはれなくてすみません)
2018年平昌五輪のビクトリーブーケ
2018年の冬季オリンピックは、韓国・平昌で開催されました。
日本チームは冬季オリンピックとしては史上最多の13個のメダルを獲得。フィギュアスケートの羽生結弦選手、スピードスケートの小平奈緒選手、女子チームパシュートの金メダルは記憶に新しいところ。
この大会では、2016年夏季リオ五輪に続いて、ビクトリーブーケは採用されませんでした。
表彰式で渡されたのはマスコットのぬいぐるみと記念品。
ブーケを採用するかしないかは開催国の判断なので何とも言えませんが、ブーケを楽しみにしている身としてはやっぱり残念。
このまま2020東京オリンピックでもビクトリーブーケは使われないんじゃないか!?と危機感を抱いていたのですが…
追記:2020東京オリンピックのビクトリーブーケ決定!
2019年11月、東京オリンピックのビクトリーブーケが発表されました!


復興の象徴である東北の花を使い、ぎゅっと束ねたラウンドタイプ。ハンドル部分には東京オリンピックのマスコット「ミライトワ」「ソメイティ」がくっついています。
花材については別記事で解説しました。
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選手はもちろん、開催国が全力で取り組むオリンピック。世界中の人にアピールする機会でもあります。
2020東京大会ではぜひビクトリーブーケに注目して、日本のお花を世界の人々に見てもらいたいですね。
2022年北京五輪のビクトリーブーケ

2022年2月4日、北京五輪が開幕しました!今回注目だったビクトリーブーケは、なんと「手編み」の花のブーケ!!
生花ではないのがちょっと残念かな?と思ったけれど、ちゃんとブーケです。1輪編むのに5時間かかるものもあるそうなので、生花のブーケより全然大変なのでは…!?
冬の五輪は寒い地域で寒い時期に開催されるので、生花を大量に用意するのが難しい国もあるでしょう。2018年の平昌もブーケなし(記念品のみ)でしたが、今後様々な「ブーケ風」アイテムが登場するのかもしれません。
参考>>永遠に枯れない北京冬季五輪の「手編み」ビクトリーブーケ(人民網日本語版)