お花の仕事をしてみたい、お花の仕事を始めたばかりの人にありがちな悩みのひとつは、「自分のセンスに自信が持てない…」ことではないでしょうか。
難しいオーダーで一生懸命花を選んで組んでみたけど、目の肥えたお客様には
「イマイチねえ。ほかの方に代わってくれる?」
とか言われちゃったり。(私も経験ありますが、本当にいたたまれない気持ちになりますよね…)
実際、花束やアレンジをつくるために花を選ぶのはとても難しい作業です。
花は自然のものなので、色も形も質感も様々だし、種類も多い。季節で種類もどんどん変わるし、同じものでも茎の硬さや花の付き方に同じものはひとつとしてありません。
最初からセンスがあってうまくできちゃう人もいるのですが、私を含め普通の人は必ずどこかでつまづくので、理論の勉強は必要です。
その中でも、まずとっかかりやすいのが「色」の勉強。今回は、その理由と必要性を紐解いてみましょう。
なぜ「色彩」の勉強から始めるのがいいのか?

「色」は単純な要素
花を組み合わせるときに、意識すべき要素はたくさんあります。「色」「質感」「季節感」「植生」「花の持つイメージ」などなど…です。
その中で「色」は、単純な要素のひとつ。花のかたちとか質感とか季節感とかを無視しても、同系色の花を束ねれば、それなりにまとまりがあるように見えます。
花を「色」として見れば、色の理論に従って組み合わせるだけ。
本来フラワーデザインはもっと奥深いものですが、まずは色の理論に従って花を組み合わせてみるのことが初心者にはわかりやすいのです。
「色」だけ見れば、組み合わせやすい!
ラッピングや陳列などにも応用できる
「色の知識」を使うのは、花の組み合わせだけに限りません。色選びは、ラッピングペーパーやリボンを選ぶときにも役立ちます。
同じ花束でも、包むペーパーの色でガラリと雰囲気が変わりますよね。適切な色選びができると、お客様が求めているイメージに少しでも近づけることができます。
また、店頭に切花や鉢物を並べるときにも、色の知識は役立ちます。例えばフェアの棚を引き立たせたいときに、どんなペーパーを敷くのがいいのか。小物はどんなテイストで揃えたらいいのか。
色の知識があれば、センスだけに頼ることなく、迷わず周りのアイテムを選ぶことができるようになります。
色の知識は、花以外のことにも使える!
理論がまとまっている
色の知識は、フラワーデザインにだけ使うものではありません。ファッション、メイク、ウェブデザイン、パッケージデザイン、インテリア…。あらゆるデザインの仕事をする人は、色の知識を身につけています。
ということは、勉強するための理論もまとまっているということ。
名前の通った資格もありますし、勉強のための参考書も豊富です。まずどこから勉強したらいいんだろう…という人には勉強しやすい体制が整っていることも大事です。
色の知識は、勉強しやすい!
色彩の勉強は、資格取得を目指すのがおすすめ。

集中して勉強した方が、身に付きやすい
さあ、ではどうやって勉強するか。これは、とりあえず「資格取得」を目指すのがオススメです。
ただ本を読むだけでもいいのですが、実際に使えるレベルに頭に叩き込むためには、「期限を区切って」「集中して」勉強するのが早道。
有名な資格はだいたい年2回ほど試験があると思いますので、その日程に合わせて勉強の予定を組みましょう。
受験料もかかりますし、「勉強しなきゃ!」という気持ちも高まります。そうやって集中して覚えた知識は忘れにくいし、日々の仕事で実際に確認しながら勉強するとさらに力が付きますよ。
色彩関連の資格は知名度が高く、履歴書に書きやすい
どうせ資格を取るなら、その後もちゃんと使えるものがいいですよね。
色彩関連の資格は名前が通っているものが多いので、履歴書にも書きやすいのがメリットです。今後、お花業界で転職するときにも「この人はしっかり勉強してきたんだな」という証明になります。
また、他業種に転職することになっても、色彩の知識は汎用性が高いもの。履歴書に書いて損はないはずです。
(花の仕事をしていましたって言うとなぜか「センスいいんですね!」とか言われがちなので、一応色のことはわかるぞ!という自信にもなります 笑)
代表的な「色彩の資格」は2つ。
代表的な資格を見ていきましょう。
色彩検定
知名度ナンバーワンは「色彩検定」。文部科学省後援の、色に関する幅広い知識や技能を問う公的資格です。
日本では最も古い色に関する検定試験で、およそ30年の歴史があります。
現在、色彩検定を実施しているのは「色彩検定協会」ですが、検定が始まったころは「全国服飾教育者連合会」が主催団体でした。もともとは、アパレル業界の店員さんたちの色彩スキル向上を目指して始まったものだそう。
そこから、様々な分野で役立つ色彩の知識を学べる形に発展し、2006年からは文部科学省の後援の「技能検定」となりました。
資格は1級~3級まで。併願や飛び級もできるので、受けたい級から受けることも可能です。
試験は6月と11月の年2回。1級は11月のみの実施です。
受験料は以下のとおり。(税込み・2018年現在)
1級 | 15,000円 |
---|---|
2級 | 10,000円 |
3級 | 7,000円 |
カラーコーディネーター検定
東京商工会議所が主催する「カラーコーディネーター検定」も有名な資格のひとつ。
色彩検定がアパレル系から発展した資格であるのに対し、こちらは学術的・工業的な要素がやや強いと言われています。
資格は1級~3級まで。併願や飛び級もできるので、受けたい級から受けることも可能です。
試験は6月と12月の年2回。1級は12月のみの実施です。
受験料は色彩検定よりやや安いです。(税込み・2018年現在)
1級 | 9,440円 |
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2級 | 7,340円 |
3級 | 5,250円 |
2つの資格の違い
先程もふれたように、色彩検定はファッション系から生まれた資格、カラーコーディネーター検定は商工会議所が主宰の資格です。
カラーコーディネーター検定の方が、やや工業・プロダクト系に強いといわれていますが、2級まではどちらも色彩の基礎を学ぶ内容で、それほど違いはないように思います。
大きく違うのは1級の内容。
色彩検定1級の試験は、2段階の選考があります。
1次はマークシートの筆記試験、2次は記述式(実技を含む)の試験です。2つの試験をパスして初めて、1級が取得できます。
カラーコーディネーター検定の1級は、「1分野・ファッション」「2分野・商品」「3分野・環境」の3つの分野に分かれており、1回に受験できるのは1分野のみです。(つまり全制覇しようと思うと3年かかります)
試験はマークシートと論述の筆記試験。分野共通の論述と、分野ごとの論述問題があるそうです。
色彩検定・カラーコーディネーター検定ともに、1級はかなり難易度が高く、合格率は30%以下。
そしてどちらも、試験は11月~12月の1回のみです。ブライダル含め、花屋的にはきびしいスケジューリング…!涙
1級はかなり専門的な知識になるので、花屋で実践的に使える知識を身につけたい、と思うなら2級までで十分ではないかと思います。
そして、その場合はどちらの資格でも、それほど差はないです。
どちらを受けるべきか?
お花の仕事の実践に活かすなら、どちらでもいいので2級まで取ってみるのがいいと思います。
まず小さくトライするなら3級から。しっかり勉強するつもりの人は3級~2級を勉強して、試験は1発2級狙いでも良いのでは。(受験料節約!)
ちなみに私は、大学時代に色彩検定の3級を取り、花の仕事を始めてから2級を取りました。
資格取得への勉強のしかた。

色彩の資格は独学でも取れるの?とよく聞かれますが、
気合入れてやれば、2級までは独学でもいける!…と思います。
ただ、花屋で働く人が忙しい仕事の合間に勉強するのはしんどいもの。私も働きながら受けたときは、結構大変だった記憶があります。
モチベーションを保つために、通信講座などを利用するのもひとつの方法です。お金はかかるけど、仕事に活かせる知識がしっかり身に付かなかったら意味がありません。
自分に合った勉強方法を選んで、「ちゃんと使える知識を身につけるんだ!」という意識をもって勉強するのが大事です。
独学おすすめ本
2019年度版の対策本。なんと専門学校時代は、この先生の授業を受けてました(本の監修しててびっくり)。色彩のプロフェッショナル。
カラーコーディネーター試験の公式テキストはこちら。3級~2級は、まずは公式テキストを見てみて、足りない部分を参考書で補うのが良いかと思います。
通信講座を検討してみる
色彩関連の資格は、通信講座でも人気です。いろんな会社で通信講座が用意されていますので、予算と相談しつつ選びましょう。
代表的なものを挙げておきます。まずは資料請求して内容を見比べてみると良いかも。
自信をもって花を選べるようになろう!
色の勉強をしたからといって、センスのいい花束がつくれるとは限りません。
でも、「色」という視点で見たときに、「ハズさない」組み合わせは確実に選べるようになります。
最初のうちは、この「自信」が何より大事。
まずはそこから自信をつける。色という要素を使いこなせるようになったら、次は「質感」や「季節感」や「それぞれの花の持つ性質」など細かい要素を取り入れてみればいいのです。
お花の仕事をはじめたばかりで、自分のセンスに自信がない…と思っている人へ。
花屋に必要なのは、センスではなく知識!まれにセンスのかたまりのような人もいてちょっとめげそうになりますが、たいていのことは理論の勉強でカバーできます。
そのなかでも、色彩の知識は体系だてて整理されており、身につけやすい知識です。何から勉強しようかなあ、と思っている人は、ぜひ取り組んでみることをおすすめします。
