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美しい絵本のような『ブレンダンとケルズの秘密』の世界にどっぷり浸かってきた

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ポスターを見て、直観で「イイ!」と思って映画を観ることって時々あるのですが、今回の『ブレンダンとケルズの秘密』はまさにそれ。

そしてそういう直観はだいたい当たるもので。

まるで緻密な絵本のような世界観と、幻想的な音楽。アイルランドに伝わる「ケルトの書」をめぐるファンタジー。

(ジョルジュ・バルビエやエロール・ルカイン、福田利之さんのイラストレーションや絵本が好きな人にはどストライクであることを私が保証します!)

 

ディズニーやジブリとも違う独特のアニメーション技術は、日本のアニメーションを見慣れた方にもきっと衝撃なのではないかしら。アニメでこんな表現ができるとは…!

まあとにかく素晴らしく良かったのでちょっと聞いてくださいな、というお話です。

予告編

 

ブレンダンとケルズの秘密 公式ページ

 

『ブレンダンとケルズの秘密』ストーリーと概要

2016年日本でも公開され注目を集めた『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』。同作にさきがけ、トム・ムーア監督のデビュー作『ブレンダンとケルズの秘密』は、アカデミー賞長編アニメ賞にいきなりノミネートされるという快挙によって、世界中を驚かせた。

『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』の青に対し、本作はアイルランド・カラーの緑一色。ごく一部のシーンを除き、伝統的な2Dの手描きで作られており、中世絵画にならって現代的な遠近法を排し描かれた。

「ケルズの書」の鮮やかで美しいケルト文様が万華鏡のように動きだす様は圧巻だ。その技術の高さ、表現の豊かさは、アニメーションを超えて、一級の絵画を見るような印象を与える。

音楽は、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』同様、数々の映画音楽を手掛けるブリュノ・クレとアイルランドを代表する音楽グループ、KiLA。

 

時代は9世紀。バイキングの襲撃におびえながらも、街を守り、聖なる書を完成させるべく奮闘するアイルランドの修道士たち。

聖なる書を描く運命となった少年修道士ブレンダンは、高名な修道士エイダンや、森の妖精アシュレイの助けを借りながら書を完成させようとします。

世界一美しい聖なる本「ケルズの書」をめぐる、少年修道士ブレンダンの冒険物語。

 

この「ケルズの書」、本当に実在するってことをさっぱり知らずに見に行ったのですが(前知識ゼロ)そんな人でも全然大丈夫。美しい映像と音楽に見入っている間にぐいぐい物語の世界に引き込まれ、見終わったときは「なんかすごいものを見た…」と放心状態に。

アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート作品だけあって、スクリーンで見る価値のある素晴らしい作品であることは間違いありません。いやもう是非、大画面で見てほしいです。

「ケルズの書」とは?

「ケルズの書」は、9世紀にアイルランドの修道士たちによって作られた、豪華な装飾が特徴の福音書。「世界でもっとも美しい本」と言われている本です。

現在はダブリン大学トリニティ・カレッジ図書館に保管され、年間90万人が訪れるというアイルランドの国宝。本物を見てみたい!と思っても、総ページ680ページのうち、一日に展示されるのは2ページなんだとか。毎日通えば少しずつ見られるらしい。気が遠くなりますね…。いわゆる人類の宝、というところでしょうか。

子牛の皮に描かれた緻密な図柄はきらびやかで美しい装飾が施されており、今はなくなってしまった表紙には宝石などもちりばめられていたとか。まさに宝石のような本!見てみたい…

 

エビスガーデンシネマにはトム・ムーア監督の直筆サインが。

 

実物はアイルランドに行かないと見ることができませんが、ダブリン大学トリニティカレッジのデジタルアーカイブで全ページ公開されています。インターネットばんざい!

→ケルズの書デジタルアーカイブ

 

また、立命館大学図書館では今回の『ブレンダンとケルズの秘密』公開に合わせて、ケルズの書の写本を公開しているそうですよ。関西のみなさんはぜひ!(現在は終了)

 

2Dアニメーションがすごい。登場人物がみんなかわいい。

物語のバックグラウンドを知らなくても楽しめた最大の要因は、独特なアニメーション。

予告編を見てもらえればわかると思いますが、遠近感のない2Dで描かれており、絵本のような不思議な雰囲気。中世絵画にならって、現代的な遠近法を排し描かれたのだそう。

アシュリンと一緒に森のケヤキに登るシーン、バイキングが攻めてくるシーン。リアリティのある描き方じゃないのに本当に引き込まれます。一枚一枚、絵画を見ているよう。

特に森の描写はすごい。こんなアニメがあるのか…!と驚かされっぱなしでした。

独特のうずまきはケルト独特の模様だそう。

 

登場人物(と、ネコ)もみんなかわいいです。妖精アシュリンがかわいい。ネコのポンガ・バンも超かわいい。

修道士たちも愛嬌があって人間味があって、シンプルな絵なのに、最後にはちゃんと感情移入している自分がいました。

音楽もすごく素敵。特にアシュリンの歌う歌は神秘的で、ぞわぞわと鳥肌が立ちました…。私が見たのは字幕版でしたが、吹き替え版でもあの歌はちゃんと再現されているのかしら。

 

そんなわけで全力でおすすめしたい良作でしたが、上映館がとっても少ない!東京の上映も終わりつつある!(涙)という残念なタイミングでのレビューですが、お近くで上映される方はぜひぜひ足を運んでみてください。

万華鏡のような美しさ、絶対スクリーンで見た方がいいですよ!

 

ブレンダンとケルズの秘密 公式ページ

 

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関連のwired.jpの特集がとっても読みごたえありました。アイルランド、ちょっと行ってみたいな。

神話とアニメの愛蘭土紀行 『ブレンダンとケルズの秘密』をめぐる旅